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III. 外国人がスペインで不動産購入を行う手順

 

  1. 納税者番号NIE/NIFの取得

非居住者であってもスペインの不動産購入にあたっては納税者番号NIF(Número de Identificación Fiscal )が必要であるため、購入者が外国籍である場合には、納税者番号も兼ねる外国人識別番号NIE(número de identificación de extranjero) 、外国法人の場合にはNIFを予め取得している必要があります。

これは必要不可欠な条件であり、これらの番号がなければ銀行口座開設もできません。

取得方法

経済投資だけが目的であれば、在外スペイン大使館の領事部に出向いて申請することも可能ですが、スペインに滞在して勉強したり働くことが目的であれば、現地の警察署を窓口としなくてはなりません。申請時には、本人のパスポートとその写しの提出が必要です。

ご自身で直接申請できない場合には、公証人に委任状を作成してもらい、代理人にNIE申請の手続きを代行してもらう必要があります。

 

  2. 設立公正証書の法定訳

個人としてではなく、外国籍の法人が購入する場合には、在日スペイン大使館で会社の設立公正証書の法定訳を用意する必要があります。銀行口座の開設にもこの書類が必要となるので、会社の捺印とサイン権保持者の署名をしたものを3部ほど準備しておきます。

 

  3. 信頼できる代理人(弁護士)を確保すること

何度も現地スペインに足を運ぶことが困難でしたら、銀行口座の開設、電気・水などの契約手続き、税務上の書類の作成・所管轄への提出、更には物件の購入代金の支払いに至るまでの一連の手続きを、信頼できる人(弁護士など)に委任されることをお勧めします。

代理人にお任せになる場合には、現地の公証人または在外スペイン大使館に依頼し、諸手続きを代行できるように権限移譲の委任状を作成します。

 

  4. 銀行口座の開設

不動産購入が目的であれば、外国人でも銀行口座を持つことができます。

銀行口座の開設は義務ではありませんが、資金の流れを明確にするために売買代金は銀行送金しなければなりませんので、非居住者であっても銀行口座を開設されることをお勧めします。こうしておけば、一旦自分自身の口座に資金を準備しておくことも可能です。また、ここから売買契約に絡む費用の精算したり、将来的には固定資産税や電気・ガス・水道などの公共料金を引き落とせるというメリットもあります。

開設にあたっては、スペインの納税者番号NIF/NIEが必要となります。

外国籍法人の場合には、会社の設立公正証書の法定訳をつけて、オリジナルと共にコピーを提出する必要があります。

 

  5. 物件調査と売買契約

売主との間で売買価格に合意がみられた暁には、物件に欠陥や問題がないか調査する必要があります。特に売主が物件に抱えている負債は購入者にかかってきてしまうため、事前に清算してあること(すること)を確認しなければなりません。

この時点で確認・取得しておくべき主な書類は以下の通りです。

 

     A.  不動産登記情報証書(Nota Simple)

不動産購入にあたっては、売主が物件の所有者であることを証明する書類が必要となります。事前に不動産登記所(Registro de Propiedad)で登記情報証書Nota Simpleを取り寄せ、正式な所有権者を確認すると共に、その物件が抵当や担保に入っていないかを調べておきます。

 

     B. エネルギー効率証明書(Certificado energético)

住居のエネルギー効率を技術者が証明したもので、住宅の売買のみならず賃貸借契約を行う場合に売主・貸主に提出が義務づけられている書類です。事前に確認します。

 

     C. 固定資産税(Impuesto sobre Bienes Inmuebles IBI)

物件所有者は年に一度、土地台帳評価額に応じて市町村税である固定資産税を支払う義務があります。法的には毎年1月1日の段階の所有者に課税されることになっているものの、売却時期によっては売主が買主にその年の所有期間に応じた負担を要求することも可能です。購入後に過去の固定資産税の未払い請求をされるリスクを回避するために、直近の納税証明書の提示を売主に要求されることをお勧めします。

 

     D. 管理費

共同体の管理組合に属する住宅物件(建物内のアパートなど)を購入する際には、組合から管理費の滞納や債務がないことを証明してもらいます。また、各共同体により決まり事などが変わるため、事前に確認されることをお勧めします。

物件調査や上記の書類は、不動産売買の専門家や弁護士に確認されることがお勧めです。問題がなければ、公証人の前での本契約に先立って、私的な売買契約書を交わします。殆どの売買の場合では、この段階で予約金や手付金を支払うこととなりますので、やはり専門家に相談して内容を確認してもらう必要があります。

買主が手付金を支払った後に取引をキャンセルした場合、そのお金は戻りません。売主側が売買契約をキャンセルした場合には、受け取った額の2倍の金額を買主に払い戻すこととなります。

 

  6. 売買契約書の公正証書化

これまでの段階を踏んだ上で、最終的に公証人の立会いのもとに正式な売買契約を締結することになります。公証人の面前で売買代金の支払いを行い、売買契約を公正証書化します。公正証書作成にあたっては、売買当事者の身分証明書や場合により委任状のほか、すでに前項5に記載した書類などを提出する必要があります。

不動産エージェントが介在した場合の仲介料の支払いもこの時に行われるのが一般的です。

 

  7. 購入後の税や費用の支払い

売買契約締結後は、公証人費用、不動産登記所費用などを精算し、30日以内に付加価値税あるいは資産譲渡税、法文書作成税などを支払います。

購入後には毎年固定資産税(IBI)を支払い、確定申告をして、非居住者所得税や必要な場合には資産税(Impuesto sobre Patrimonio)を支払う義務がありますので、税務士への相談をお勧めします。

ちなみに賃貸収入にかかるEU圏外の非居住者の所得税は、一律24%となっています。

日本との二重課税状態を回避するために、両国間で「租税条約」が結ばれています。また、日本で確定申告の際は「外国税額控除」制度を利用して一定の金額を限度として、その年の日本国内の所得税から外国で得た所得税を差し引くという制度があるようですが、詳しくは専門家にお問い合わせください。

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